古代西アジアをモチーフにした架空の王国記です。月一回で連載中。
エルディア史上もっとも名高い女王ルフィスイリア。
救国の王と謳われるその生涯は、しかしまた歴代の王のなかでもっとも過酷なものである。
故国滅亡から再興までの十二年。
歴史に語られぬ時の空白には、史実とはならなかった真実が眠っていた。
「史実は事実の一部でしかない。事実もまた真実のすべてではない。だからこそ、我々は真実を探す」
祖父の言葉に導かれ、歴史に残された記録から覆い隠された真実を明かそうとする少女フィル・シン。
母后ファ・シィンの謎、ルフィスイリアの影、死を守る鳥(アズレア)の叫び、過ぎ去った時への思い。
複雑に絡み合う思惑と願い。交錯するそれぞれの生き様。
時は留まることを知らぬ。
それは刻まれては消える風紋のように……
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将にして、次妃、また聖騎士(エルディアル)である者。
その呼び名をファ・シィン。
国の象徴たる花の名で呼ばれる女は、最後の戦に臨む。
かつて辺境の戦地にて槍を交わした二人は、今再び王都にて相対した。
戦に出会い、戦に別れ、戦にて語らう。
互いの間に声は不要。
手にする槍は、ままならぬ運命の中にあって、ただ一つ自在に振るうことのできたもの。
それは何よりも雄弁なことばでもあった。 (第十話より)
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