2009年1月14日

『はじめてのおつかい』

『はじめてのおつかい』表紙絵
タイトル:
はじめてのおつかい(こどものとも傑作集(56))

ISBN/ASIN:
4-8340-0525-9

著者:
筒井頼子/林明子

出版社:
福音館書店

価格
¥ 840(税込)

あらすじ:
「みいちゃん、ひとりで おつかい できるかしら」 みいちゃんはママに頼まれて、はじめてのお使いに出かけます。
行き先は、いつも公園にゆく通り道にあるお店です。
お家を出て、二つ先の通りの坂道を登りきったところにあります。
ママから預かった200円を手に、どきどきしながら出かけたみいちゃんは、ちゃんとお買い物を済ませて帰って来られるでしょうか。

息子がこの絵本を好んで読み始めたのは1歳3ヶ月ごろだったと思います。
上り坂も上手に走れるようになり、それに比例して豪快に転ぶようになったころでした。

息子が最初に興味を示したのも、主人公のみいちゃんが坂道で転ぶ場面です。
よほど気に入ったようで、よく
「あ、ころんじゃったぁ!」
と膝をついて遊んでおりました。
もちろんその後には
「どこどこ?」
と落としてしまった百円を探します。
ここまでが、第一弾。
1歳半の夏ごろまでの様子です。

そして、秋も深まってきたころでした。
息子は突然、空になったカップを持って立ち上がり、大きな声で
「ぎゅーにゅー、くだたーいっ」
おやつに飲んでいた牛乳のおかわりです。
カップの中の「牛乳」が絵本に出てきた「ぎゅうにゅう」であることに、気がついたのでしょうね。
いつもは「おかわりっ」なのですが、この日、不意に回路がつながったようです。
それからしばらく
「ぎゅーにゅーくだたい」
という遊びが続きました。そんなに飲めもしないのに。

さらに数日後。
2歳の誕生日の前日でした。
ケーキ屋さんにてお祝いのケーキを選んでおりますと、元気良く大きな声で
「いちごの、くださーいっ」
びっくりするわたしと夫を尻目に、店員さんに向かい
「これ、ください」
「このケキ、ください」
「いちごの、これ、ください」
店員さんが笑いをこらえつつ、こちらでよろしいでしょうかと確認すると、これまた元気良く
「はい、よよしいです」
これが息子の「はじめてのお買い物」でした。もちろん支払いはわたしどもがいたしましたが。

いずれわたしにも息子におつかいをお願いする日が来るのでしょうが……
頼もしいような、不安なような。

さて、みいちゃんにおつかいを頼んだママ。
こちらのママも、やはり心配だったのでしょう。
みいちゃんを坂の下まで迎えに来てくれていました。
もしかしたら、最初からずっと少し後ろから娘のおつかいを見守っていたのかもしれません。

最後の口絵には、赤ちゃんを抱っこしたママとミイちゃんが一緒に帰宅する姿が描かれています。
そして、裏表紙では、みいちゃんは赤ちゃんと一緒に、ママのそばで牛乳を飲んでいます。
転んで怪我をしてしまったみいちゃんの膝にはガーゼ。
どんなお話をしながら、牛乳を飲んでいるのでしょうね。
おつかいから帰ってのほっとするひとときが、余韻として楽しめます。

それから、もうひとつ!
あちこちの看板や掲示物に書かれている内容をご覧になってください。
お店の名前は「筒井商店」、みいちゃんのお家の表札が「尾藤三(おとうさん)」
クリーニング屋さんは「あらい」さん、薬屋さんは「きくや」さん。
そして絵の教室を開いているのは「はやしあきこ」さん。
他にもくすっとしてしまうことがたくさん。
隅々まで丁寧に面白い絵本です。

さて、我が家では、今日も息子の大きな、そして元気のよい
「いちごとぎゅーにゅー、おかわりでくださーいっ」
を聞くことができます。
これを聞くと、なんだか絵本の中の人物になったような、ほのぼのとした温かい気持ちになります。
たとえ直前にどんないたずらをしてくれていても!
絵本のお話は大人の心も温めてくれるのですね。
これも出会えてよかったと思う絵本です。

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