風紋 第七夜 三「瑕」
皇帝の弟であり、皇帝の事実上唯一の妃の子であるにも係わらず、アルデシールの立場は非常に脆く、難しい均衡の上に成る。
「瑕を持つ皇子」
古きカーディイヤの血を汲まぬ青宮を、東都ナスラの官たちはそのように蔑んだ。
その青宮が、エルディア王族の姫を妻に迎える。
それはキ・ファ国国主の血統は確実に変わることを意味した。
2010年1月 2日
皇帝の弟であり、皇帝の事実上唯一の妃の子であるにも係わらず、アルデシールの立場は非常に脆く、難しい均衡の上に成る。
「瑕を持つ皇子」
古きカーディイヤの血を汲まぬ青宮を、東都ナスラの官たちはそのように蔑んだ。
その青宮が、エルディア王族の姫を妻に迎える。
それはキ・ファ国国主の血統は確実に変わることを意味した。
2009年9月27日
帰れない。
彼女一人を永久(とこしえ)の闇に封じて、わたし一人だけがぬくぬくと居心地の良いところへと帰ることはできない。
「すまない。せっかく迎えに来てもらったのに」
「戻ってくるんだろ」
黒々とした瞳に怯む。何もかもを見透かしそうな眼差しから、わたしは逃げた。
2009年7月20日
淡々しくおぼろげな思い出の中で、わたしが彼女に伝えたかっただろう言葉は、もう二度と帰ることのない言葉になってしまった。
本当に大切だった言葉を削ぎ、なお残った少ない言葉にわたしは思いの全てを込めた。
「さようなら」
2009年5月12日
セラナスは信じていた。
公との間に婚儀が成れば、キ・ファとエルディアの間にも必ず平和が訪れる、と。
しかし。
――公は真に将であられた。
ザレーディールの手記には、そのように記されている。
以下の誤字を修正いたしました。ご連絡ありがとうございます。
2009年4月19日
鬼喰第4話「追憶」7
更新いたしました。
二ヶ月ぶりの更新になってしまいました。
お楽しみいただければ幸いです。
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