前々から思っていました。
小説やエッセイのレビューがあるように、辞書・辞典のレビューがあるといいのにって。
え?
辞書や辞典なんて、どれを買っても同じじゃないか。単語の説明書になんの違いがあるんだ、ですか?
違うのです。
違うのですよ、これが、まったくと言っていいくらい!
まず、同じ言葉でも、説明の角度が違います。たとえば、意味、用法、印象。
つぎに、観点が違います。どういった立場からの解説か。読み手? 書き手? 編集者?
さらに、編者の個性により、偏りがあります。言葉の好き嫌いや、得手不得手。
たとえば、なんですけど。
社会学用語に関してはブレーンがいた。でも、建築用語に関してはブレーンなしで編集した辞書・辞典と、
建築用語に関してはブレーンがいた。でも、社会学用語に関してはブレーンなしで編集した辞書・辞典では、
自ずから得意とする分野が違ってきますよね?
この辞書は、ここが充実してるよ、とか。
この辞典は、これが売りだよ、とか。
そんな指針があったなら、いいな、とは思いません?
なのに、辞書・辞典のレビューは少ないのです
しかも専門的過ぎてよくわからない!
(辞書選びに指針を必要とするのは、辞書選び入門者です。
専門家は他人のレビューによらず、自分で選べばよいのですから)
そういうことで、不肖八仙花、辞書・辞典レビューを作ってみました。
ご紹介するのはわたしのお気に入りの辞書です。
(お蔵入りの紹介はあえてしなくてもいいかと思いますので)
偏りもありますが、あなたの辞書選びのお役に立てれば幸いです。
主にわたしの主観、及び活用に準じての分類になります。
編集者が「これは表現辞典だ」と主張しても、わたしが「類語辞典だ」と思っている限り、類語辞典に分類されます。
OK?
以下の項目についてご紹介いたします。
あくまでも、レビューが主眼であるため、使いやすさ等の辞書のランク付けは一切いたしません。
辞書にランクがつけられるような専門家ではないのでご容赦ください。
辞書・辞典 | 主な内容 | 出版社 | 定価 | レビュー作成日 |
---|---|---|---|---|
使い方の分かる「類語例解辞典」 | 類語 | 小学館 | 3,690円 | 2003/09/26 |
何でもわかる「ことばの知識百科」 | 表記他 | 三省堂 | 2,500円 | 2003/09/26 |
日本語の正しい表記と用語の辞典 | 表記 | 講談社 | 1,359円 | 2003/09/26 |
時に応じ場合に即し「日本語使いさばき辞典」(大活字版) | 類語 | あすとろ出版 | 3,600円 | 2003/12/18 |
カタカナ語・略語辞典 | カタカナ語 | 旺文社 | 2,300円 | 2003/12/18 |
類語活用辞典 | 類語 | 東京堂出版 | 2,900円 | 2005/1/20 |
現代副詞用法辞典 | 副詞 | 東京堂出版 | 4,900円 | 2005/1/20 |
似た言葉使い分け辞典 | 類語 | 創拓社出版 | 2,233円 | 2005/3/31 |
表現類語辞典 | 類語 | 東京堂出版 | 5,800円 | 2005/3/31 |
究極版逆引き頭引き日本語辞典 | 表現 | 講談社+α文庫 | 1,900円 | 2005/3/31 |
現代語から古語が引ける「古語類語辞典」 | 古語 | 三省堂 | 2,800円 | 2005/3/31 |
語源辞典「形容詞編」 | 語源 | 東京堂出版 | 2,800円 | 2005/3/31 |
辞書・辞典を選ぶときは、必ずご自身がよくご存じの項目(あるいは言葉)をご確認ください。
稀に、とんでもない解説がなされていることがあります。
とくに専門用語については、専門家でない人間が記述しているので間違いがある可能性もあります。
先日カタカナ語辞典を購入する際には、並べられているカタカナ語辞典の実に8割が(とある言葉に関しては)トンデモ辞典の名を冠してよいものという状態でした。
一例としてご紹介いたします。
ベランダ:バルコニー、テラスのこと。露台。
太字部分にご注目いただけると、上記トンデモ辞典のトンデモ度がお分かりいただけるかと思います。
テラス:(1)登山用語。岩壁などにあるわずかな岩棚。(2)建築物の屋外の張り出し。一階の床と同じ高さで作られる。露台。当然ひさしはない。露天の台なんだから当たり前。
バルコニー:(1)バルコン。劇場の高桟敷、上桟敷。(2)建築物の階上の張り出し。手摺つき。ひさしはない。だって屋内のバルコン《桟敷》にひさしは要らないからね。
ベランダ:部屋の延長線上にある屋外への張り出し。部屋から直接出入りできる。部屋以外からは出入りできない。通常ひさしがある。部屋の延長線上だもの。
違いがよく分からない方は、建築関連の書籍を漁って調べてみましょう。
と、いうことで、あくまでも辞書・辞典の編者は言葉の専門家ではあるけれど、建築の専門家ではないからごちゃ混ぜにしちゃうこともあるんですよ、という一例です。
ちなみにポケット、ハンディタイプの辞書ほど類語の混同率が高いので、ご注意ください。
上述の事例をわたしがなぜ知っているかというと、以前、建築学の講義で指名された際、トンデモ辞書と同じ回答をし、いたく恥をかいた経験によります。
……だって、うち、本家は和建築だし、自宅はマンションだもんよ。知らんっての。
こちらでご紹介している辞書について、
「この辞書のこの項目は間違っています。正しくは〜〜です」
「この辞書のこの項目は不正解ではありませんが適切でもありません。〜〜のように記すべきです」
「この項目は〜〜ではなく、〜〜であることが望ましいです」
「この項目の解説は不親切です。〜〜をあわせて記すことを求めます」
などの指摘がございましたら、どうぞその情報をお寄せください。
それにより、その辞書・辞典の傾向や用途がより判然としてくるように思います。
また、こちらで紹介したい辞書・辞典がございましたら、ぜひお知らせください。
上記要領にそってのご紹介は、お名前と一緒に掲載させていただきたいと思います。
ただし、当面は日本語の辞書、辞典に限ります。
ご協力いただければ、恭悦至極。
あらためて言うまでもありませんが、わたくし八仙花の使用感に基づいて記述しております。
それ以外の根拠は持ちません。
ちなみにわたしは辞書・辞典をこよなく愛する素人です。
ご購入の際には、かならずご自分の目で、頭で内容を確認してくださいませ。