鬼喰 ― たまはみ ―

白珠

 聞こえていた。
 聞いていた。
 なぜなら、それはわたしの「和(なぎ)」だったから。
 わたしの荒ぶる気を静め、ひととき穏やかな流れをうむ稀有なもの。
 巫(なぎ)として捧げられた数多の慰めのなかで。
 ただ一つ和(なぎ)たりうる、いつくしきもの。
 そこにある、それだけで、和(なぎ)たるもの。

 その声なき、声。

 強く聞こえては、また、悲しみの淵に沈む。

 それはまるで、波のように。
 寄せては引き、引いてはまた寄せる。
 くりかえしくりかえし暗く揺れ、わたしを呼び起こす。

 憎い、と 叫び、愛しい、と 泣く。

 果てのないほどに揺れ惑い。

 そのたびに心の澱は降り積もり
 映すように心はいたく澄んでゆく。

 ああ、それは、その様は。
 わたしの中にも、揺れを生む。
 さざめく水面に流れ行く悲しみに耐えかねて。
 おいでとのばしたわたしの腕に、すがるように飛び込んできた、わたしの宝珠。
 大切に抱きしめて。
 水の底までつれて行こう。

 ごらん。
 暖かくゆるい流れを。
 見上げる水面のやわらかな光を。

 そして、わたしを。

こっそりあとがき 2

 えー・・・・・・これは、実は一度も表に出したことのない代物でした。
 リンクどころか、存在さえも知らせたことはなかったのです。
 ですが、ファイル名が連番になっているので、もう、この際、本文上下のナビゲーションからはリンクしてしまえ、ということで、半隠しファイル。(隠れてない)
 これは、水神さまの独り言。
 細波ちゃんだけ書いて、水神さまを書かないのはエコヒイキだ、という、とある方の強い希望により作られた独白です。
 誕生に至るまでの会話には以下のようなものがありました。


八仙花 「でも、わたし神さまになったことないから、神様の視点ってわかんないし」
某知人 「そんなの誰にもわかりゃしないでしょうが」
八仙花 「なるほど。だけど、水神様、ほとんど出番なかったし」
某知人 「人の男に心を残しつつ神に嫁ぐって、スゴイ萌えポイント高いって。
     ここは是非!!」
八仙花 「是非って言われてもねぇ……(萌えってナンだよ、萌えって)」
某知人 「ね、書こう、書こうよ、書こうったら」
八仙花 「何を書いたらいいのやら、見当もつかないんだけど」
某知人 「短くていい! このさいヘタレ詩モドキでもいい。許す。書け!」
八仙花 「ヘタレ詩って……詩、あんま書いたことないし」
某知人 「だからヘタレててもいいって言ってるじゃん!!」


 以上、誕生秘話でした。
 これに対しての感想をいくつか頂くにあたりまして、感謝の念をこめて追記。
 某知人にも、心よりお礼申し上げます(笑)


某知人 「ごらん、わたしをってのがまたそそるよねー♪」
八仙花 「そういうことを言っているのは、今のところ君だけ」
某知人 「・・・・・・」