風紋 ― 風は史書に記されぬものを謳う ―
人名辞典
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アルディエート公息 503〜?
アルディエート女公の息子。王都ティエル・カン出身。ルフィシアの婚約者でもあった。
婚約成立からおよそ半年後に出奔。以来消息を絶つ。
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アルディエート女公 ?〜?
ラ・エルディアの大神官を務めた。王都ティエル・カン出身。十三歳にてアルディエート公家を継ぎ、大神官となる。
第十六代国王の弟を夫に迎える。子息の出奔後アズライルを養子に迎え、家督を譲る。
史書に名は伝わっていないが、サーシャとする書がある。
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イデルナート公 ?〜?
第十五代国王第三妃の兄。第十五代、第十六代国王の在位中は「王とも見紛う」権勢を誇ったとされる。
母は第十二代国王の孫、父は第十四代国王の兄とされるが、イデルナート私録の他にそれらの記述が見当たらないため確証はない。
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イルガ・ファム 487〜509
第十五代国王の正妃。ランガ城市出身。父はラ・エルディア第十四代国王。
ファ・シィンを妹に持つ。生来病弱であったと伝えられる。
王子アズライルを生み間もなく他界した。
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ヴァンダ=ハン ?〜524?
氏名不詳。第十三代国王の兄とされる。三代に亘り「老」として助言役を務めた。
晩年はルフィシアの師としてシェル・カンで過ごした。
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エルディアル(第十四代国王) ?〜509
ランガ城市出身。正妃はルーシエイラ。ファ・シィンの父。
506年に即位するも、三年後に死去。毒殺説が有力だが確証はない。
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エルディアル(第十五代国王) 477〜512
正妃はイルガ・ファム。ルフィシア、アズライルの父。
509年にイルガ・ファムを迎え即位したときには、すでに妻と二人の子が在ったという史上例を見ない経緯を持つ。
イルガ・ファムの死後ファ・シィンを次妃に迎えた。
妻の兄イデルナート公の傀儡だったという評価もある。
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エルディアル(第十六代国王) ?〜524
正妃は第十五代国王第三妃の娘シャルハイン。 妻の伯父イデルナート公と
ファ・シィンの不和に苦しんだという記述を史書に見ることができる。
即位以前は葬神殿の神殿騎士を務めていたこともあり、
アズライルとの関わりがあったことも察せられる。524年ダル街道の戦いに赴き、帰らぬ人となった。
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カルシュラート公 484〜503
イルージアの父。ランガ城市出身。
もっとも王位に近いとされながら、ランガの下級貴族の娘を娶った。
第五次キ・ファ戦役にて、没す。花傑伝ファ・シィンの章にはその額を矢に射抜かれたとある。
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シャルハイン 502?〜?
第十六代国王正妃。第十五代国王の娘。
母は第三妃。ルフィシアの腹違いの姉にあたる。
ダル街道の戦いで夫を失い、以後王宮の奥に篭る。没年不詳。
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ストゥーリア ?〜?
第十四代国王正妃ルーシエイラの妹。
第十七代国王アズライルの正妃リセル・ターガの母でもある。
ハン大老(ヴァンダ=ハン)の子息に嫁いだ。
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セラ・ネイ=カルシュラート=イルージア 504〜563
リ・エルディア国元帥。エルディア・ランガ城市出身。
ランガ守護職にあったカルシュラート公の娘として生まれた。
ルフィシアのエルディア復興を支えた武人。
史書には「ティエリア・ナフィエ=カルシュラート=イェルシュレイア」と記される。
両親を早くに亡くし、ファ・シィンの元で育つ。
ファ・シィン譲りの槍の腕前で、その妙技は「如辰星」と称えられた。
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ファ・シィン 489〜524
エルディア中興の祖ルフィシアの母。エルディア・ランガ城市出身。
ランガの守護と呼ばれた女傑であり、キ・ファ戦においては目覚しい働きを見せた。
生きた聖騎士としてエルディアの守護者と讃えられた人物。
槍の名手であり、その槍は「花閃槍」と呼ばれた。
ティエル・カン落城の折、キ・ファ国皇帝グァンドールに槍での一騎打ち挑んだとされる。
ファ・シィンの呼称はエルディア王家の象徴「銀の花」にちなむ。本来の名は伝わっていない。
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リセル・ターガ=システィル=イディアータ 502〜?
第十七代国王アズライルの正妃。ラ・エルディア国ルギア城市出身。
母はルーシエイラの妹ストゥーリア。
才女として知られ、正妃となる以前は、大老と呼ばれた祖父ヴァンダ=ハンの祐筆を務めた。没年不詳。
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ルーシエイラ ?〜522
第十四代国王正妃。王都ティエル・カン出身。父は第十三代国王。ファ・シィンの母。
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ルフィシア・ダイス=エルディアナ=サキス 510〜537
エルディア中興の祖。史書には「ルフィスイリア・ディライス=エルディアル=セイキシァス」と記される。
ラ・エルディア王都ティエル・カン出身。ラ・エルディア第三王女として生まれる。第一位王位継承者だった。
母はファ・シィン。十二歳で第二王都シェル・カン城城主となるも、翌年末故国滅亡。
その後十二年を経てリ・エルディアを建国する。宿税を縮小し、道路税、通商税を導入。
またガラ国難民の支援にも積極的に取り組んだ。
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レイダム・ソウン=イルギアム=アズライル 509〜524
ラ・エルディア最後の王。ラ・エルディア王都ティエル・カン出身。
キ・ファ国の書に、「その真名はレイデュアラム・ソウファラン=エルディアル=アーシュレン」と残されている。
花傑伝イルージアの章では「アジェル」。
母は第十五代国王正妃イルガ・ファム。
生後間もなく母を亡くし、叔母ファ・シィンの元でイルージアとは姉弟のように育った。
十歳でアルディエート女公の養子に迎えられ、以後は即位までの数年を葬神殿で暮らす。
大神官と王を兼ねたただ一人の人物。
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アルデシール・ウルス=グァンドール 499〜572
グァンドール朝二代皇帝。バルク城市出身。初代皇帝の義弟。
戦に長けた武人として知られるが、残された書簡や歌などからは風雅に通じた文人としての側面もうかがえる。
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カウラ・アイン=トゥーランシヤ 475〜522
キ・ファ国第四王朝トゥーランシヤ朝ただ一人の皇帝。
空木の変にて、グァンドールの協力を得て皇位に就く。
しかし遊興に耽り国政を疎かにした。
それを諌めたグァンドールに腹を立て、都に残されていたグァンドールの妾妃ランドゥイスに斬りつけた。
以後「乱心」を理由に僧院にて余生を送る。
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ラージーン・エル=カーディイヤ 453〜510
キ・ファ国第三王朝カーディイヤ朝最後の皇帝。八入の変で皇位に就く。
四十年で辺境の一国であったキ・ファ国を大陸の東を統べる強国に育てあげた。
武を愛し、文もまた重んじる名君でありながら、猜疑心の強い一面も併せ持つ。
激しい粛清に堪えかねた甥のトゥーランシヤ、グァンドールに討たれた。
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ラグル・ヴァストデュール=グァンドール 483〜538
キ・ファ国グァンドール朝始祖。バルク城市出身。母はカーディィヤ朝の公主。
伯父帝ラージーン・エル=カーディイヤを討ち、トゥーランシヤ朝を建てる。
西の鎮守公としてバルクに戻るが、トゥーランシヤの退位後、推挙され皇帝に即位した。
自らの本拠地であるバルクに遷都、エルディアへの進軍を開始する。
過去、ランガをめぐる攻防でファ・シィンとは何度も戦った。
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ランドゥイス 478?〜540
グァンドールの妾妃。
グァンドールの母の侍女として仕えるうちグァンドールの父の手掛けとなりアルデシールを身籠るも、
ラージーンの粛清により、主を失う。主の子グァンドールに妾として迎えられた。
トゥーランシヤとの同盟のため一人都に残されたが、乱心したトゥーランシヤに斬られ、傷を負う。
◆フィル=シン
15歳。学生。生真面目にして自信家。学び舎でも優等生でとおっている。
でも、「過ぎ去った事柄を列挙して数え上げる」歴史だけは不得意。苦手克服ために史書を繰リはじめるも初っ端から挫折するところだった。
今はルフィスイリア女王の空白の十二年に夢中。
「史書に綴られるこの文字の中にも人がいること、忘れていたの」
時の空白に封じられた真実を探して、毎夜、勉強中。
◆おじいちゃん(笑)
70歳。史学者。先年までは王立図書館の司書長を務めていた。
人生のすべてを史書の編纂にかけてきた。温厚で優しい人柄ながら意志の強さは格別。
フィル=シンにはおじいちゃんと呼ばれているが本当は大叔父。両親を亡くしたフィル=シンを引き取ったのは14年前。
歴史は嫌い、と言うフィル=シンに歴史とは何かを教えようとしている。