風紋 ― 風は史書に語られぬものを謳う ―

Page  1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15


あらすじ

 
風紋バナー

 ラ・エルディア史上もっとも名高い女王ルフィスイリア。
 その生涯は、また、歴代の王のなかで、もっとも過酷なものである。
 故国滅亡から再興までの十二年。
 史書に語られることのない時の空白には、史実とはならなかった真実が隠されていた。
「史実は事実の一部でしかない。事実もまた真実のすべてではない。だからこそ、我々は真実を探す」
 祖父の言葉に導かれ、歴史に残された記録から覆い隠された真実を明かそうとする少女フィル・シン。
 母后ファ・シィンの謎、ルフィスイリアの影、死を守る鳥(アズレア)の叫び、過ぎ去った時への思い。
 複雑に絡み合う思惑と願い。交錯するそれぞれの人生。
 やがて少女が手にする真実は、彼女の人生をも変えていった。
 時は留まることを知らぬ。
 それは刻まれては消える風紋のように……

 将にして、次妃、また聖騎士(エルディアル)である者。
 その名をファ・シィン。
 エルディアに名立たる守護、ファ・シィン最後の戦いが始まる。
 かつて辺境の戦地にて槍を交わした二人は、今再び王都にて相対した。
 戦に出会い、戦に別れ、戦にて語らう。
 互いの間に声は不要。その槍だけが、すべて。
 ままならぬ運命の中にあって、ただ一つ自在に振るうことのできたもの。
 それは、何よりも雄弁なことばでもあった。       (第十話より)