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■タイトル:伝説の卵神官
作品URL:http://starlite-inn.com/rauls.html
■著者:seedsさん
サイト:星明かり亭
■キーワード/FT,コミカル,ほのぼの
■あらすじ
素行の悪さから辺境へと飛ばされた神官ラウル=エバスト。
赴任地で彼を迎えたのは気さくな村人、にこやかな村長、頑固な老神官。
そして謎の卵......
■とぼけて生きるしかないことってあるのかもしれない。
【第1部】未来の卵
■第1章より
中央の本神殿から辺境の分神殿に左遷されたラウル。
ほとぼりが冷めるまでは仕方ないと腹を決め、はるばる二ヶ月の旅路を経てやってきたのは、その昔強大な力で世界を支配したという魔法王国の......廃墟にほど近い村だった。
そこにかつて栄華を極めたという大国の面影はすでになく、今は廃墟となった遺跡が冒険者を誘うだけ。
「......けっ、しけた場所だぜ」
長閑な風景と気のいい人々に迎えられ、善良な神官の皮を被るラウル。
しかし当然、ほとぼりが冷めるまで長閑な田舎暮らしを楽しむほど、運命はやさしくできてはいないのでした。
■ユーク神とユーク神殿
命には生と死の二つの側面があります。
ラウルが仕えるユーク神はその「死」を司る神です。
ユーク神は闇もまた司ります。
闇のもたらす安らぎと、死。これをひとつの神が司るのであれば、自ずから「生はやすらかならざるもの」となるような気がします。
そう思えば、光の竜の卵があれほどに賑やかで騒々しいのも納得ですが。
その安らかならざる生に、無理矢理つなぎとめられてしまった少女。
幾度も死を願い、しかし叶えられることなく彼女は棺の中で目を覚ます。
己には与えられぬ安らぎに募る苛立ちは、やがて世界へと向けられてゆきます。
全てが滅んでしまえば、あるいは己もまた滅べるのかもしれない、と。
彼女との戦いが、第1話の中核でもありましょう。
ゲルクが老いてなおユーク神官であり続けようとする一端も、彼女にあるのかもしれない、などとも思いました。
■人の持ついくつもの面
口が悪くて女好き、喧嘩っ早くて腕も立つ。
どこか飄々としていて、パッと見には神官としては少々破天荒なだけ。
でも普通の人ならそれも個性と認められても、ラウルは神官です。神官としては破天荒なだけ、ではすまないんですよね。じゃあやめれば、もっと適職があるんじゃないの、となるのが世の中ですから。
どうしてラウルが「神官」でいられるのか、あり続けられるのか。
そこがわたしが「伝説の卵神官」シリーズに心惹かれる理由です。
もちろんラウルはユーク神官として優れた才能を持っています。けれど、ラウルをユークの神官たらしめているのは才能だけではないんですよね。いえ、もしかしたら「才能」はユーク神官として満たすべき「条件のひとつ」でしかない、ということかもしれません。
物語中盤、彼の生い立ちが明らかになるにつれて、逆に「ラウルの天職は神官だ。中でもユークの神官こそが相応しい」とさえ思えてくるのです。
飄々として見えるのも軽く見えるのも、本当は軽くない過去を、他人にまで負わせないためのラウルの気遣いなのかなぁ、などとも思います。
頑固なゲルクさんも、笑顔の村長さんも、悲しい闇の巫女も......。
考えてみれば人が人に見せられるものには限度があるんですよね。
ありのままのあなたを見せてと言われても、見せられない己もあるわけです。
見せない、教えない、知らせない、気取らせない。
そういう気遣いの大切さも感じました。
だからこそ、より本当に近い自分を見せることの出来る関係の気兼ねのなさが貴重なのだと思いますし。
軽々しく人には見せない一面と、見せ合えるからこその繋がり――付きあいの長さや血縁といった通常の「親しさ」とは別の繋がり、とでもいいましょうか。真実を共有できる間柄が、常に親しい関係であるとは限らないことなど――そういう不思議を再認識したお話でした。
「本当のことが常に良いこととは限らない」を斜に構えないで真っ直ぐ描かれているのも、心地よいです。
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■外伝1 夜の戯れ
そういえばこれからさらに月日は流れ、ラウルさんはまだひとりなんですけど、いやはやどうしていらっしゃるんでしょうねえ(笑) 子育てでそれどころじゃない?
■外伝2 Present
幼いラウルとその養父エバスト司祭のもどかしいやり取りに顔が緩んでしまいます。
緩む反面、信じたいけど信じていいのか確信がもてないラウルの心の傷が痛々しくも思いました。
■外伝3 道標
冒険は無謀ではない。よい言葉ですよね。どこへ行きたいかと問われて「どこまでも」という答えもまたいかにも冒険者らしくていいなあ、と。勘弁してくれと叫ぶ肉体労働担当者が憐れです。頑張れ剣士。
■外伝4 Voice
なぜラウルは辺境に飛ばされたのか。辞令を受けて「いつかこんな日が来ると思ってた」とラウルが拗ねるんですけど、それが可愛いくて、ちょっと胸に痛いです。親の愛情って子には伝わり難いものなんでしょうね。
■外伝5 野薔薇に寄す
この思い切りの良さと人の良さが、ユーク神がラウルを見込む理由なのかもしれません。
■番外編 追憶の《青》
これは多分純愛モノで悲恋モノです。多分がつくのは、まあ、うん、いろいろと。
この結末は死よりも遠い別離ではないかと思いました。
「そうも行かないんだ。もう......いなくなっちまったから」
彼女に渡すはずだった花束を手に、彼女だったはずの別人に笑いかけるのは、泣くよりも切ないです。記憶喪失って罪な病だ......
■番外編2 calling ~冬枯れの森にて君を呼ぶ~
出会って二年、やっと名を呼び合うそのゆっくりさ加減がなんとも言えず微笑ましいです。
アイシャのマイペースを二年もの間、二人はじっと見守っていたんですねぇ。男らしいなあ。
アイシャが無口なのは迂闊に言葉を発することの危険を知っているからなのかもしれませんね。
一生懸命に話しかけるだけが親しさの目安じゃないこととか、言葉が人に及ぼす力をあらためて考えました。
■以下、番外小話の感想は随時更新予定。
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